年商13億円へ急成長した衣料品店がなぜ倒産?「老舗の跡取り社長」が犯した“ありえない失敗”
いよいよ中国経済「倒産ラッシュ」で「狼たちの宴」
7時間前 -こうした倒産した企業の不良債権を含む資産などを特殊資産と呼ぶが、この特殊資産投資市場が中国の企業倒産急増で拡大している。
経営コンサルタントの元には、ビジネスの失敗談がよく集まってくる。商売で成功している人よりも、商売で困っている人のほうが頼りにしてくる仕事なので、必然的に失敗したエピソードのほうが多く集まってくる。
今回、経営コンサルタントの仕事を18年やってきて、みなさんに、ぜひとも知ってもらいたい失敗談がある。ビジネスの世界に限らず、人生においても学びの多いエピソードになるので、一人でも多くの人に読んでもらいたい。前後編でお送りする。
成功と失敗とを分けるもの
日本海側の人口6万人弱の小さな港町に生まれたT氏。親の仕事は100年以上続く老舗の呉服店。小さい頃から商売に馴染みのある生活だったこともあり、有名私大を卒業後、東京の量販店に就職した。
「もともと勉強は好きだったので、商売の勉強も苦にはなりませんでした。その店ではお客様の集め方や商品の売り方などを学びました」
T氏が就職した1980年代は景気も良かった。販促を仕掛ければ飛ぶように商品が売れて、ビジネスの醍醐味を肌で感じることができた。商売の面白さにのめり込んだT氏は、その量販店で5年間働いた後、「個人店の商売も学びたい」と、北陸地方で繁盛する衣料品を取り扱う店に転職した。
ある日のこと、父親から「家業を継いでほしいから戻ってこい」と連絡が入る。呉服店は年々売上が落ちており、商売は立ち行かなくなっていた。後ろ髪を引かれる思いもあったが、一方で、今まで学んできた商売のノウハウを実践できるというワクワク感があった。
T氏は実家に帰るなり、在庫の呉服を全て売却した。サラリーマン時代に貯めた600万円をつぎ込み、18坪の店舗を40坪に拡張、呉服店から衣料品店へ業種転換した。取り扱う商品は、普段着はもちろん紳士服、婦人服をはじめ、肌着、靴下、子供服まで様々。北陸の個人商店で学んだ仕入れ術を活かし、商品は大阪の問屋に直接買い付けに行き、仕入れ値を叩いて、店頭で安く売ることに徹した。
集客は、東京の量販店で学んだチラシによる販促術を取り入れた。当時、地方都市では珍しい売り方だったこともあり、T氏の戦略は大当たり。年商1500万円の呉服店は、3年で年商1億円の衣料品店へと様変わりした。
ネット通販でさらなる成功へ
勢いに乗って2店舗目を出した頃、T氏のところにある情報が入る。
「近くにしまむらが出店するらしい」
衣料品の大手チェーンは脅威だった。他に売上を作る方法はないか模索していたところ、T氏はネット通販という新しい売り方に目をつける。
「正直、半信半疑でした。町にはネット回線も引かれておらず、ホームページを見るだけでも電話代がかかりました。ネットで商品を買う人なんているはずがないというのが本音でした」
ダメ元でネットのショッピングモールに出店。当時、店頭で売れていたダイエット器具を試しに売ってみたところ、案の定、ひとつも売れなかった。諦めかけていたところ、他のネットショップでダイエット食品がバカ売れしているのを見つける。
「これだ!」
早速、同じ商品を仕入れて、ネットショップで売ってみた。飛ぶように売れて、あっという間に売り切れになった。それを機に、T氏はダイエット食品のネットショップに方向転換、急激に売上を伸ばしていった。
しばらくすると、自分のノウハウと人脈だけではネットショップの売上に限界があることに気づいた。もともと勉強好きだったT氏は、売り方のうまいネットショップの経営者に教えを乞うために、全国各地に出向くようになった。ダイエット食品の卸先にも人脈を作り、ショッピングモールの担当者からもノウハウを教えてもらった。
そんな時、知人のネットショップ運営者から、ある売り方を教えてもらう。
「ショッピングモール経由で顧客のメールアドレスを獲得する広告を使えば、売上が一気に伸びる」
T氏は言われた通りに、そのネット広告を買った。売上は瞬時に急増し、1ヶ月も経たないうちに月商数百万円から数千万円の店に早変わりした。
「こんな簡単に売上が伸びるとは思っていませんでした。毎月のようにその広告を買い続けました」
広告料金は1本200万円。決して安い金額ではなかった。しかし、広告を買えば、確実に投資した金額以上の利益を取り返すことができた。T氏にとって、そのネット広告は、絶対にハズレない博打をやっているようなものだった。結局、3年間、その広告を買いまくり、気づけばネットショップの売上は月商1億円を超えていた。
ゲーム感覚だったネットビジネス
ネット通販の黎明期の2000年代初め、T氏は総合売上で、全国のネットショップで2位を獲得し、出店していたショッピングモールから表彰された。ダイエット食品を取り扱うネットショップとしても、全国で1位の売上だった。北陸の小さな衣料品店は、ネット通販の業者から注目の的となった。
ネットショップの運営体制は、男性2名の社員と、パートの女性1人のみ。1日300件以上の注文をさばき、ネット通販だけで年商9億円の売上を叩き出していた。実店舗もしまむらに対抗し、好調な売り上げを維持、T氏の会社はネット通販と実店舗を合わせて年商13億円にまで急成長した。
さぞかし私生活でも裕福な暮らしをしていたのかと思いきや、T氏は「まったく贅沢しなかった」と意外な言葉を口にした。
「その当時でも月のお小遣いは3万円でした。欲しいものもなかったし、田舎なので、お金を使うところもありませんでした」
では、なぜ、そこまでして売上を伸ばすことにこだわったのか。
「達成感だけですね」
T氏は淡々とした口調で言った。お金に興味はなく、売上を伸ばすための「商売」というゲームが、ただ純粋に楽しかったそうだ。
絶好調だったネット通販は、しばらくすると成長に陰りが見え始める。
ダイエット食品が売れると気づいた企業が、次々にショッピングモールに参入、同じような商品を取り扱うネットショップが増え、価格競争がより激しくなった。
思うように売上が伸ばせなくなったところで、知人のネットショップの経営者から、あるアドバイスを受ける。
「複数のネットショップを立ち上げて、それぞれのお店に広告を入れて行けば、総合的に売上は伸びる」
当時、ネットショップの業界で流行った「多店舗経営」と呼ばれる売り方である。同じ商品を取り扱うネットショップを複数作り、そこに広告を入れて売上を総合的に伸ばす戦略だった。実店舗で言えば、チェーン店やフランチャイズに近い売り方である。
多店舗展開で暗雲が立ち込め……
T氏は早速、アドバイス通りに同じショッピングモールに2号店、3号店とネットショップをオープンさせ、次々にネット広告を投下していった。
しかし、売上は伸びるどころか、下がる一方になった。ネットショップの場合、実店舗と違って地域やエリアの概念がない。同じ商品を複数店舗で扱っていれば、当然、客は分散してしまい、1店舗あたりの売上は下がってしまう。
今思えば失敗して当たり前の戦略だった。だが、当時はネットマーケティングの概念すらない時代である。多店舗展開という手法を取り入れて、失敗するネットショップ経営者はT氏以外にもたくさんいた。
ダイエットや健康食品に対する規制が厳しくなったことも、T氏のネットショップの売上の下落に拍車をかけた。
「すぐに痩せる」「あっという間に健康になる」というキャッチコピーが使い放題だった当時のネット通販業界は、まさに無法地帯だった。そこに厚生省などの国の機関が規制の強化に乗り出したことで、ネット上のダイエット食品や健康食品に対する風当たりはより一層強くなった。
ショッピングモール側も、ダイエット食品を取り扱うネットショップに対して、より細かい指導をするようになった。メールや電話で担当者から直接ページの改善指示が入り、無視して退店処分になるネットショップが続出した。取引のあった健康食品の卸業者が、嘘の効果効能を謳ったダイエット食品を販売していたことで、不正競争防止法で逮捕される事件も多発した。
「だんだんネットショップの運営に対するモチベーションが下がっていったんです。思うように売上を伸ばせない環境になって、『もういいや』という投げやりな気持ちになってしまいました」
年々、店舗の年商が下落していく中、T氏をさらなる悲劇が襲う。起死回生の新商材を扱う中で信じられないトラブルに襲われたのだ。パニックを起こしたT氏は自殺未遂をし会社は倒産、それでも再起を図った彼が選んだ道とは?<【後編】年商13億円から自己破産、自殺未遂…地獄を味わった跡取り社長の意外な“終着駅” >で詳述する。
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引用元:
https://news.livedoor.com/article/detail/20754419/
2021年08月25日 20:06